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(勝手に)ART-SCHOOLやSPITZやGRAPEVINEの楽曲を全曲解説するBLOGです。
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『フリージア』

ART-SCHOOL,木下理樹,戸高賢史
ポニーキャニオン
(2006-04-19)

 
第二期のARTが初めてリリースしたmini album(個人的には初めてリアルタイムで買ったARTの盤なので思い入れ深い)。

【特徴】
・幽玄な前アルバム『PARADISE LOST』から一転して、『Flora』期を予感させるようなギターポップで穏やかな4曲シングル。
・今作では初めてART-SCHOOLとしては木下以外のメンバーが作詞・作曲、そしてVoまでもを手がけた曲が収録された。
・ジャケットはスピッツ『名前をつけてやる』のオマージュ。一人一人のメンバーがぐにゃっと曲がった感触も似ている。

2006年4月発売。


1.フリージア
シングル・トラックではあるものの、惜しくもオリジナル・アルバム収録の機会を失っており、ベスト盤に収録されるまで、他のシングルに比べるとあまり陽の目を見られなかった曲。
アンビエント風のSEと共に奏でられるギターのアルペジオが、『PARADISE LOST』期とは違い輪郭がハッキリしておりながら、優しい率直なギターロック感のある曲。サビなどで鳴らされるグロッケンの音色も、『PARADISE LOST』のそれよりも、賛美的に響いている。
<<裸のままの君の裸のままに触れていたい>>というサビの一節は、第二期当初で見られたエロティックで官能的な響きではなく、どちらかと言えば静謐な身体に触るかのような感覚を覚える。かと言って、手放しでポジティヴかと言うと、そこはもちろんART-SCHOOL、<<綺麗なままじゃきっと見えないものがあるのさ/この哀しみが/この憎しみが>>と歌い切る様が清冽だ。
PVはホームレスのような浮浪者に扮したメンバーが集まり、演奏するといったもの(最早、言うまでもないが、今回も櫻井が良い味を出している)。


2.光と身体
「フリージア」ではなく、『Flora』に収録されたのは、こちらの曲だった。
タイトルはどことなく、GRAPEVINE「涙と身体」を思わせるセクシャルなもの。
歌詞をみてみると、<<すれ違った優しげな天使は/いつも通り青い血に染まった>>は、(その当ブログの当該記事でも触れているが)スピッツ「愛のことば」からの引用で、どちらもあまりに残虐かつ神聖な清冽な感覚を活かすことに成功している。
個人的に歌詞的な意味では、ART-SCHOOLの中でリアルタイムで聴いて最も驚いた曲だった。ここまで「君」に向けたメッセージが明確な曲もなかったように思えたからだ。
<<あの光は遠ざかっていく>>のに、今までのARTならば黙って涙をこらえながら震えながらそれを見つめ続けることしかできなかった。しかし、ここでは<<手を繋いでいよう>>と「君」へ明確に手を伸ばしている。この情景は、これ以降、第二期ARTの原風景とも言えるような地点になってくる。


3.キカ
ART-SCHOOLとして初めて戸高がヴォーカルを取った曲。
前曲の流れを引き継ぎつつも一転して、アンビエントな景色が広がるようなポストロックなメロディが麗しい。
歌詞は、第一期的のART的な異国情緒を第二期的な幻想的な景色に滲ませている。<<無垢な狂気/晴れた午後に>>や<<イノセントは黒く染まる>>など木下にも引けを取らないくらい、鬱屈した情景を歌った部分も多いが端麗なメロディと戸高のドリーミーなヴォーカルゆえに、思わず気付かずにいてしまいそうなくらいだ。
戸高の曲は、この後も現時点で数曲、収録されているが、その中でも最もドリーミーな曲だろう(オーストリアの画家、アルフォンス・ミュシャに影響を受けたと公言する戸高だが、そのような教会的な賛美歌の要素が早くも垣間見える)。


4.LOVERS LOVER
「カノン」同様、The Cure「High」的なドラムが心地良いが、歌詞の方は、一見、ポジティヴな言葉を使っているようで、どこまでも尽きることのない諦念を歌っているという面では、かなり歪つな曲。個人的にもARTの中で「LUCY」に続けてベスト3に入るほど好きだ。
<<彼女の手は光の中に、彼の手は影の中にあったんだ>>は村上春樹『1973年のピンボール』からの引用。
ART特有のファンタジックな風景が目に浮かぶ詞ではあるが、よく聴いてみると、生と性への諦めさえ感じさせるグロテスクな構成としてはスピッツに近いかも知れない。
サビの<<I wanna drown in you>>は、木下も気に入っていたのか、当時のツアーグッズにも、この言葉がプリントされていたと記憶している。


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『PARADISE LOST』

ART-SCHOOL,ACO
ポニーキャニオン
(2005-10-19)

 
ART初の海外レコーディングにして第二期初の3rd full album。

【特徴】
・UKインディギターポップの聖地、グラスゴーで録音されたもの。
・プロデュースにTony Doogan(Belle And SebastianやSuper Furry Animalsなどを手がけた)を、一部の曲のキーボードにMogwaiのBarry Burnsを、コーラスにはex.The DelgadosのEmma Pollockや後にKARENの一員となったex-on botton downのアチコなどを迎えて制作された。
・全編にわたって、グラスゴーの空気がパッケージングされており神秘的で幽玄なアルバムに仕上がっている(ライブDVD『Sleep Flowers』ではそのレコーディング模様を収録している)。
・アー写で戸高が着ているTシャツはThe Flaming Lipsのもの。またジャケットも戸高が現地で撮った写真を加工したものである。

2005年10月リリース。



1.Waltz
のっけから戸高のリバースギターが幽玄なメロディーを奏でるSigur Rosを彷彿とさせる曲。
このアルバムのカラーを象徴するような、典型的な北欧サウンドで、シンプルながら幻想的で綺麗なアルバムの幕開けを飾っている。
<<今からあの海を観に行こう>>と相変わらずアルバムの幕開けにふさわしい、「君」を誘う一節から始まるが、前作の「水の中のナイフ」や前々作の「BOY MEETS GIRL」とは全く違う穏やかな質感だ。
ちなみに、キーボードはMogwaiのBarry Burnsによるもので、<<For You>>のコーラスは元DelgadosのEmmaによるもの。


2.BLACK SUNSHINE
前曲の穏やかな雰囲気を受け継いだまま、シンプルに爆発していく典型的なARTらしい曲調のリードトラック。
全体的なコード進行は第一期の「サッドマシーン」のそれと近いが、戸高のシングルコイル一直線ながら美麗なフレーズにより、単調にならない。
この曲に限らずアルバム全体に言えることだが、このアルバムの中のアップテンポな曲でも、第一期のような切迫感に満ちたものはなく、ゆるやかに美メロのまま盛り上がっていくものがほとんどだ。グラスゴーマジックによるものだろうか。
ライブでは木下と戸高が間奏で向かい合ってお互いにリフを弾く様がクールである。


3.ダニー・ボーイ
タイトルは映画『ダニー・ザ・ドッグ』からか。
穏やかなアルペジオが終始鳴り続けており、全体的にメロウな曲調もBelle And Sebastianのよう。サビでも爆発せずに透き通っていくように澄んだサウンド。キーボードもゆるやかに切ない。
の割に、歌詞を見ると相変わらず「猿」全開の歌詞でふしだら。
そのためか個人的にこの曲が一番胸に沁みたのはあろうことか公衆便所で聴いていた時だった。苦笑


4.Forget The Swan
タイトルはまんまDinosaur Jr.「Forget The Swan」から。
このアルバムの中で唯一、スコットランド的なまろやかさを保ちつつ大爆発するような疾走感のある曲調。戸高のギターも、今までに無くストレートでシンプルな装飾音程度の役割で北欧パワーポップ的な爽快感がある。
歌詞の<<口でされるのが好き?>>は前作収録の「イディオッツ」から使いまわしのもの。木下氏はオーラルセックスの仕草がお好みなのだろうか(すぐに続いて<<そんな恥ずかしいことを何故今も覚えてる>>と続くが。苦笑)。


5.クロエ
ミニアルバム『スカーレット』の項をご参照下さい。
とは言え、この曲は前にリリースされた時のそれをリミックスしたもので全くサウンドの質感が違っており、今作ではグラスゴーテイストにまとまっていて、かなりソフトに聴きやすくなっている。だからこそ歌詞の救いの無さが余計に際立つのもあるという訳だ。


6.あと10秒で
ミニアルバム『あと10秒で』の項をご参照下さい。


7.欲望
タイトルはイギリス映画『欲望』から。
サウンド面はサビでは木下のソロ時代の「RIVERS EDGE」のそれを使いまわしている。
リフがたった2コードで進んでいくARTの中でもシンプルな曲ではあるが、戸高の甘美的なアルペジオが曲に広がりを持たせている。
歌詞は<<君がいてもいなくたって>>と若干、日本語のおかしい部分も(無論、この程度の間違いならばメロディにしっくりのるフレーズとしてロックミュージックにおいては「日本語がおかしい」範囲ではない)ありつつも、自己と他者の境界で揺れる心境がストレートに表われている。
また、歌い出しの<<Touch Me>>は、ノルウェーのニューウェーブバンド、A-ha「The Sun Always Shines On TV」のそれに似ている。


8.刺青
ミニアルバム『LOST IN THE AIR』の項をご参照下さい。


9.LOVE LETTER BOX
タイトルはまんまThe Posies『Love Letter Boxes』から。笑
サウンドは戸高の鋭いアルペジオとパワーコードとが交互に続く印象的なイントロで始まってサビは控えめ。
英文法がおかしい(<<She Don't Know>>は通常、don'tでなく、doesn'tを使う。しかし、The Flaming Lips「She Don't Use Jelly」の引用かも?)木下の歌詞は、どこか第二期のそれと言うより木下ソロ時代や第一期を思わせるどこか可愛らしいつくりになっている。
ちなみにライブDVD『SLEEP FLOWERS』ではこの曲のイントロを木下が明らかにミスっていて何だか微笑ましい。笑


10.PERFECT KISS
タイトルはNew Order「Perfect Kiss」から。
サウンドもNew Order的。と言うか、第二期以降のART特有のアシッド感のあるファンキー路線の「クロエ」を引き継いだような曲調。
相変わらず歌詞の<<口を使って>>のあたり木下のオーラルへの偏愛と言うか執着のようなものが見え隠れするようでエロティックで良い。苦笑
最近ではあまり演らないが、当時はライブでもよく演っていた曲で、戸高のワウをゲイズするスタイルがシューゲイジングだった。


11.PARADISE LOST
タイトルは旧約聖書を下敷きにして書かれた超大作『失楽園』から。
まるで辞世の句のような、ドライながら陰鬱なタイトルトラック。
このアルバムの中で、最も耽美的なバックのSEに切り裂くような戸高のギターがかぶさった曲で第二期の真髄とでも言うべきスタイルになっている。
歌詞は今までのARTの曲を引用したものをも切り取っており、主に「車輪の下」、「斜陽」、「水の中のナイフ」などが使われている。
<<ハート型の〜>>はNIRVANA「Heart Shaped Box」からか。
ちなみに、この曲は今まで一度もライブでプレイしたことがない。
戸高は、このアルバムの中で最も好きな曲にこの曲を挙げている。


12.僕が君だったら
穏やかな賛美歌のようなキーボードをバックにアルペジオ主体で歌われる、素朴な曲。
歌詞もタイトルも「Perfect」などに通じる木下の疎外感と自己否定をテーマにしたもので痛々しい。
この曲はグラスゴー的と言うよりは北欧、特にデンマークのMewのようなサウンドになっている。


13.影
素朴な前曲と幽玄な次曲に挟まれながらも、力強いパワーポップスタイルの曲。
この曲も全体的な雰囲気はUSパワーポップのそれと言うより北欧ポップに近く、どこか儚い。
歌詞を見るとあまり第二期のような肉体的なものよりかは『LOVE/HATE』期のような喪失感に満ちたものになっている(とは言え、出だしから<<「身体だけだなんてよく言うね」>>だが。苦笑)
Barryが奏でるキーボードがところどころに流れており、ポップ感の隠し味になっている。


14.天使が見た夢
タイトルはフランス映画『天使が見た夢』から。
ARTのアルバムで最後の曲は素朴だとはもう既に何回も書いてきたが、この曲もそれは同じ。
少しリバーブのかかった木下のボーカルに、淡々としたキーボードと囁くようなコーラスが重なっていて救いのない世界観を優しく包み込むようなサウンドになっている。
歌詞は虐待をも思わせるような、捨てられた「君」への歌(=もしかして木下自身に歌った曲かも知れない)。
<<憎んだってそれで良いと初めて素直に思えたんだ>>という一節があまりに憂愁を掻き立てられる。

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『あと10秒で』

ART-SCHOOL
ポニーキャニオン
(2005-06-22)

 
第二期ARTのメジャーレーベルとなったPONY CANYON(ROCKER ROOM)に移籍して初のmini album。

【特徴】
・メジャー再デビューを果たした、ARTの三部作で最後のアルバム。
・今までの第二期のミニアルバムはモノクロームだったいるが、今作のジャケは朱色を押し出している。なお、縦に見るジャケットは初。
・タイトルトラックの別ミックスの隠しトラックあり。ここには記載していません。


1.あと10秒で
揺れるサンプリングから始まって、単調なままサビで爆発という彼らのお得意の曲構成であり、今でもARTの代表曲と言えばこの曲を挙げる人も多い。
歌詞も最小限に言葉数を抑えて(デジタル処理されたドラムの抑制されたビートも光る)、サビでの躍動感を出している。
今でもライブで必ず最後に演る曲で、ファンからの人気も高い。
が、正直に言うと自分としてはこの曲、ARTにしては前作「LOST IN THE AIR」くらい異色な曲に聴こえ、歌詞がシンプルな分、ARTの情景的なスタイルもそぎ落とされてしまっているようで、これを代表曲とするのは何だか腑に落ちなかったりする面もある。


2.汚されたい
タイトルはSyrup16g「汚れたいだけ」を思わせる。「汚されたい」と受動的な願望系であることがミソである。
これも機械的なドラムに、落ち着きながらも存在感のあるギターを乗せておりどこか80'sポストパンクの香りもする曲。
ポップで甘い曲調ながら、歌詞は相変わらずふしだらで、第二期らしい曲でもある。


3.イディオット
タイトルはラース・フォン・トリアー監督のデンマーク映画『イディオッツ』からか。
第一期の「foolish」の延長線上にあるような、フランジャー全開かつエッジのたった攻撃的な曲。タイトルも「foolish」を違う単語で表したものだし。笑
ここではドラムが機械的に叩いている部分と肉迫した迫力で力強く叩いている部分とがあり、それが不自然でなく曲に合っていて良い味を出している。
「口でしたいの」という言葉は、後に「Forget The Swan」で同じように使いまわされている。<<たった一度寝ただけ>>と繰り返す様が露悪的である。


4.LITTLE HELL IN BOY
サンプリングした洋画のフレーズが終始バックで流れている、ミドルテンポながら美しい曲。
この曲の歌詞は、後に木下の小説『皆殺しのキキ』の世界観として使われており、それはボリス・ヴィアンを意識した作風にしたらしい。
「スケートリンク」という言葉が出てくるのは、「ロリータキルズミー」以来だが、情景的にはかなり近いものがあるかとも思える。
また「ユカ」と初めて日本人の女性の名前が使われている。


5.カノン
タイトルはギャスパー・ノエ監督のフランス映画『カノン』から。
イントロのギターのアルペジオやドラミングはThe Cure「High」のそれと同じもの。
サウンドも歌詞も後に「LOVERS LOVER」に使いまわされている。
この曲はバンドアレンジよりも、アコギスタイルでライブでプレイされることが多かったように思う。
歌詞を見ると初期の村上春樹のような切なくも残酷なものになっている。


6.僕のビビの為に
タイトルはボリス・ヴィアン『日々の泡』の見開きに書いてある一節「僕のビビのために」から。
現時点でART史上、唯一のインスト曲。
と言っても、演奏は非常にシンプルで、ドラムもリズムマシンの打ち込みサンプルをそのまま借用したような質感で、リリース当時は『手抜きでは??』と揶揄されたりもしていたが、ミニマルな感性がファニーだ。


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『LOST IN THE AIR』

 
自主レーベル、Very Ape Recordsからリリースの2nd mini album。
(ジャケは『LOST IN THE AIR』のがamazonになかったので再び『Missing』で代用しています…)

【特徴】
・こちらも第二期に移行すると同時にレコード会社との契約が終了したので、自主生産限定盤。現在入手困難。
・こちらも後に『Missing』というコンピレーション・アルバムに全曲収録されます。
・基本的にモノクロのアートワークを含め前作『スカーレット』と世界観を共有しています。
・内ジャケのイラストはtoddyによるもの。

2005年2月リリース。


1.LOST IN THE AIR
恐らく後にも先にもないだろう、ART唯一キーボードでリフを奏でている珍しい曲。
「スカーレット」とは違ってプログレ的とも言える曲構成で、ARTの中でもかなりの異色曲。
事実、ARTの本人達も扱いきれていない部分があるのか、ライブでも演奏されることは少ない(…と思っていたら第二期の解散ライブとも言えるワンマン『ART-SCHOOL』でかなり久し振りに演奏された)。
歌詞を見ると、相変わらず第一期の厭世感をエロティックな感性を動員して描かれている。
PVは正月の翌日に撮られたものらしい。


2.FLOWERS
サイケデリックな揺れたギターとともに、力強いベースが貫かれている。「レモン」同様、久し振りにかなりのパワーポップな曲だ。ドラムもリズミカルでハンドクラップできそうなくらいである。
歌詞の<<空っぽの君でいいさ〜>>のくだりはSyrup「Inside Out」を思わせる(当時Syrupは「Inside Out」を音源化してはいなかったがライブでは度々演奏していた)。
サビもSyrupのように、韻を踏んでリズミカルに進んでいくスタイルになっている。


3.羽根
イントロはSHERBETS「Black Jenny」と同じミュート奏法から。
この曲もどちらかと言えばリフ一本で攻める曲だが、戸高のギターによって単調に聞こえることはない。
歌詞を見ると、<<小3で終わった>><<パラシュートは開かない>>などストレートに絶望を歌っている。後に木下はインタビューでその二つの歌詞を見て「それくらい精神がすごいマズい状態だったんでしょうねえ…」と苦笑した。


4.刺青
後に『PARADISE LOST』にも収録される単調ながら叙情的な曲。
タイトルは邦画『刺青』と、木下が昔付き合っていたガールフレンドが(タランチュラの)刺青を実際にしていたことから。
機械的でタイトなドラミングと落ち着きながらも、ディレイなどを使って80'sポストパンク的なテイストを出したギターが光る曲。
木下や戸高自身もこの曲は特に気に入ってるらしく、なるべくライブで演りたい、と語っていた。


5.I CAN'T TOUCH YOU
Radiohead「Black Star」を思わせる、フェードインで始まる曲。
ギターの音数が少なく、ドラムも単調だがベースの音が太くグルーヴ感があるので、サウンドだけを聴けば第一期のようなサウンドになっている。
この曲もそうだが、第二期の木下が描く喪失感は第一期のような抽象的、幽玄的なものより具体的で肉感のあるものになっている。猿という言葉を多用しているのも第一期からのファンが離れていった一つとも言えるかも知れないが、個人的にはスピッツの手法を露骨に表現しているようで良い。


6.PERFECT
タイトルは、Smashing Pumpkins「Perfect」から。
第一期からARTはシングルやミニアルバムの最後の曲は淡々とした素朴な曲をもってくるのが定説だった。この曲も、それらと同じ方向ではあるが、二番からは戸高のギターが入るのでどちらかと言うとSlowdiveのような、サッドコアとシューゲイザーを混ぜ合わせたような質感になっている。
歌詞を見ると、第一期のラスト曲に常々持ってきていた疎外感を全開に押し出したものになっており、「ステートオブグレース」や「天使が見た夢」などを思わせる。


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『スカーレット』

ART-SCHOOL
ポニーキャニオン

 
リードギターとベースに新メンバーを迎え、始動した第二期ART-SCHOOLのデビューmini album。
(ジャケットはamazonに『スカーレット』のものが無かったため『Missing』で代用しています…)


【特徴】
・第二期に以降すると同時に、レコード会社に契約が終了。なので、自主生産限定盤であり現在は入手困難。
・後に『Missing』というコンピレーション・アルバムに、全曲収録されます。
・木下の自主制作のレーベル名はVery Ape RecordsでNIRVANA「Very Ape」から。
・良くも悪くも、第一期とは違う質感で従来のファンから賛否両論を巻き起こす結果となった(個人的にはこの辺りからちょうど聴き始めたこともあり当初は特に違和感は感じませんでした)。


2004年8月リリース。


1.スカーレット
タイトルはSpitz「スカーレット」からか。
木下もマサムネ同様に(スピッツの同名曲の項を参照下さい)、このスカーレットと言う言葉のアバズレと言う隠語的用法が気に入ったので使ったのだろうか。
サビのリードギターは若干「SKIRT」を思わせる。
第二期ART-SCHOOL幕開けを象徴する曲で、今でもARTの代表曲の一つ。ばりばりのシングルコイルの音を前面に押し出したジャキッとしたギターで始まるイントロは、良くも悪くも第一期の雰囲気とはまるで違う開けていく感覚がある。歌詞も今までよりもエロティシズムが全開になっている。アウトロのtoddyのオクターブギターが良い味を出している。
PVはMarilyn Manson「Anti Christ Supersutar」のように壇上から木下が絶唱するもの。他のメンバーはロボット動きで演奏、特にtoddyが良い味を出している。


2.RAIN SONG
第二期のメンバーで始めて制作されたのが、この曲。
軽快なドラムフレーズから始まるこの曲も、また第一期には無かったゆったりした雰囲気をたたえている。
歌詞を見ると、やはり何よりも<<それより何か肉食いてぇな>>が衝撃的。笑
また「冷めちゃって」の表記が<<冷めちぁって>>となっているのは中原中也の影響だろうか。
この歌詞から出待ちでファンから肉をプレゼントされたというエピソードも。肉食系男子、木下の咆哮だろうか。


3.クロエ
タイトルはボリス・ヴィアン『日々の泡』を原案に撮られた邦画『クロエ』より。
第二期以降のARTの新機軸であるアシッド感のあるファンキーな方面の実験的な作品。
今までのARTにはなかった、横ノリな曲調も相まって露骨に肉体的でエロティックな歌詞がより如実にリアリティをもって響く。
ライブでもよく演る曲で歌詞が「家にいんの、一歩も出ないで」を「家にいんの、ヤりたいだけだろ?」とさらに露骨な表現で歌うような時もあった。


4.TARANTULA
サビのメロディが完全にJoan Osborne「One Of Us」。笑
これは久し振りにかなりあからさまに引用しているのですが、大丈夫でしょうか木下さん。
タイトルは、歌詞通り、当時の木下のガールフレンドが実際にしていた刺青の柄がタランチュラだったことから(ROCKIN'ON JAPAN誌より)。
前曲に続いて肉体的な歌で、歌詞は明らかなセックスソング。


5.1995
タイトルは「1965」の使いまわしだろうか。
第二期になって戸高がもたらした大きな要素の一つに、ポストロック的な雰囲気をもったままどポップな曲をつくるようになったことが挙げられるが、この曲は早くもその最たるところだ。
白昼夢の後のような澄み渡っていくようなクリーンなギターに、可愛らしい曲調でSpitzのようにポップ。
歌詞は、身体の描写以外は第一期に近いものがあり喪失をテーマにしたもの。
<<約束したあのバスに乗って>>はどことなく村上春樹の短編を思わせる。


6.APART
タイトルはSpitz「アパート」からか。
典型的な激しいロックサウンドの曲で、歌詞は再びエロティシズムに戻っている。
基本的にリフ一発で突っ走る曲調の割に、「車輪の下」や「UNDER MY SKIN」みたいな、ある種の単調さは感じない。戸高のギターがもたらした広がりが感じられる。
<<憧れていたんだ>><<傷んだ>>と久しぶりに言葉遊びを使ってるところも。


7.君は僕の物だった
The Policeの質感を意識したという、ミドルテンポで淡々とした曲。
タイトルの「物」扱いは木下の非情さを表しているのか…何と言うか無骨で逆に素敵でもある。苦笑
「気づいた?5キロ痩せたの」のくだりは実際に木下が言われた台詞で印象的だったものをそのまま歌詞に使っている(狂人日記より)。
この曲に限らず第二期ARTは「猿」という表現を何度も多用する傾向にある。

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『BOYS DON'T CRY』

ART-SCHOOL
EMIミュージック・ジャパン
(2004-03-17)

 
現時点でART-SCHOOL唯一のライブ音源。

【特徴】
・タイトルは、The Cure「Boys Don't Cry」から。
・内ジャケやライブDVD内で木下が着ているバンTはThe Smithのもの。
・ライブ盤ながら、第一期ARTの集大成のようなベスト的選曲で、第一期の入り口にはもってこいの内容。
・第一期ラストツアーの様子をMCもそのままに収録してるので、センチメンタルな側面も。


19.Outcider
唯一、今作で新しく収録された未発表音源。
とは言え、この曲は実は木下ソロ時代からあり、ART-SCHOOLとしての自主制作のデモにも収録されていた曲だったりする。
タイトルは、アメリカ映画『アウトサイダー』からか。
サビは、メロディも歌詞も「SWAN SONG」を使いまわしているためか、今まで未発表だった割には、それほど大きい特別感は無い曲だが、ライブ録音ならではの迫力のあるノイジーなギターと木下の切迫したシャウトが素晴らしい。
ラストのは櫻井が全力で叩いていることもあり、ひなっちとのグルーヴにも増して、かなり迫力がありオルタナティヴでエッジィなグルーヴをたたき出しているのも秀逸だ。


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『LOVE/HATE』

ART-SCHOOL
EMIミュージック・ジャパン
(2003-11-12)

 
第一期のオリジナルでのラストアルバム。
『Requiem For Innocence』同様、こちらも邦楽オルタナの金字塔的側面があるのではないだろうか。


【特徴】
・制作当時、メンバー仲も木下の精神状態も最悪の状態だった(スタジオ内の会話は皆無で、木下も宿を失っており友人や女性の家を転々とする日々で、ひなっちと休憩時間にぽつりと話すくらいだった)にも関わらず、最も幻想的で澄んだアルバム。
・未だにART-SCHOOL史上、最高傑作の呼び名も高いアルバムでもある。個人的にも『Requiem For Innocence』と合わせ最も好きです。
・『MIss World』同様、隠しトラック収録。

2003年11月リリース。



1.水の中のナイフ
タイトルはロマン・ポランスキー監督のポーランド映画『水の中のナイフ』から。
MARQUEE誌によると、木下曰く友達の結婚式から帰ってきてすぐに書いた曲とのこと。
前作の『BOY MEETS GIRL』とは違う、重苦しくも耳に残る印象的なリフで、アルバムの幕開けを飾る。次の曲「Evil」とも相まって、オルタナよりもグランジ色の強い作風になっている。
歌詞はイノセントを失わざるをえなかった苦悩と後悔の残る痛々しいもので(<<I wanna be twisted, Just wanna be twisted>>と屈折しきった思いをシャウトする様も素晴らしい)、ファンの中でも人気が非常に高い曲。個人的にもこの曲は、初めて聴いたARTの曲で、自分のライブでも何回もコピーしたので、とても思い入れがあります。
ライブの幕開けも務めることが多いARTの名曲の中でも大名曲。
ライブではtoddyのサビでのメロウなギタープレイと木下の絶唱が素晴らしい。


2.Evil
シングル『Evil』の項をご参照下さい。


3.モザイク
同上。


4.BUTTERFLY KISS
『Melloncollie〜』期のスマパンの世界観をまるごと持ってきたような、ロマンチックな曲。
ART史上、最もベースがハネるフレーズをしており、リズム隊の絡みが面白い。
幻想的な歌詞やそこはかとない虚無感は『シャーロット e.p.』期のインディ時代に回帰したかのよう。
サビの歌い出し部分は「LUCY」の2番のそれを使い回している。


5.イノセント
冒頭部分の歌詞は、まんまSmashing Pumpkins「Geek U.S.A.」の同一部分から引用。
幻想的な雰囲気は前曲を引き継いだままバックで終始鳴り続けているシンセのフレーズが虚ろで儚い。
歌詞は、特にこの時期のARTが最も追求していた、(タイトル通りの)イノセントの喪失を前面に押し出したもので失われていく世界を如実に描いている。
アウトロのリードギターのフレーズはThe Cars「Just What I Needed」のシンセパートを借用したもの。


6.アパシーズラストナイト
タイトルは「JUNKEY'S LAST KISS」の使いまわし。
そしてリフ。これは完全にHouse Of Love「Shine On」。笑笑
ただ曲自体は、シューゲイザー感よりもポストパンクに近く耽美的な雰囲気が全体を支配している。
ART流の俯きがちで逃避的なクリスマスイヴソング(もしかしてスピッツがクリスマスに逃避するとこんな感じに近いかも知れない)。


7.LOVE/HATE
終始、木下の凄惨な精神状態を反映したような独白的な歌詞で綴られる(<<25歳で花が死んだ>>など)悲痛なタイトルトラック。
<<千の天使〜>>のフレーズは、初期に多用していた中原中也「宿酔」から。
「自分以外の違う人間に生まれたのなら…」という想いが当てもなく彷徨う様は、「LUCY」や「Perfect」などに似た疎外を表している。
この曲だけではあまりに苦しいからか、次のポップな「ジェニファー'88」と対になっているようで2曲連続で演ることが多かった。


8.ジェニファー'88
シングル『Evil』の項をご参照下さい。


9.Bells
Aメロのメロディラインは、「TEENAGE LAST」のものを使いまわしている。
前曲の流れをそのままに息苦しくかった雰囲気をポップに持っていくことに一躍かっている。
シンプルな曲ながら、キャッチーで、今までの空気を壊すことなく新しい風を流し込む曲で説得力のある曲。また、久しぶりに間奏部分でキーボードが使用されている。
また<<そばかす/レインコート/柔らかい耳の形>>と第二期的なセクシャルな要素も感じさせる。


10.SKIRT
シングル「SWAN SONG」の項をご参照下さい。


11.UNDER MY SKIN
シングル「UNDER MY SKIN」の項をご参照下さい。


12.プールサイド
タイトルはbloodthirsty butchers『プールサイド』からか(情報提供:dwさん)。
またイントロのギターフレーズは、The Cranberries「Dreams」のイントロからか。
この曲でも「JUNKY'S LAST KISS」同様、単語に規制がかかっていてモザイクに×××部分に入るのは「ヘロイン」(しかし規制音は無し)。「JUNKEY'S LAST KISS」同様、誘っているっぽく聞こえるからレコード会社の待ったがかかることに。
歌詞は、ART-SCHOOLの世界で描かれている、歪つな畸形の魚としての「君と僕」を歌っており、耽美的な前半の流れに近い雰囲気の曲。


13.しとやかな獣
タイトルは邦画『しとやかな獣』から。
前作のエンディングを飾る『乾いた花』に比べると、どちらかと言うとメロウでおとなしめではある。
しかし、歌詞は<<生まれたことに意味はないから明日も生きれるよ>>と最後に希望をもって締めくくられる。ただ、これも前作の<<繋がっていたい、生き残っていたい>>という宣言に比べると幾分、虚無的に聞こえる。
サウンドは、ギターが瑞々しい澄んだ質感になっている。


14.SONNET
タイトルは、中世ヨーロッパで流行った韻文スタイルのソネットから。
終始後ろで鳴っているのはEels「Estate Sale」をサンプリングしたものだろうか??
ただの弾き語りでなく、そのサンプリングされた外国の少女と母親の話し声が前曲の雰囲気を引き継いで諦念のように響かせている。歌い出しからSyrup「シーツ」のようなアルコール依存の感覚が歌われている。
ちなみにMARQUEE誌によると、このアコギは木下でも大山でもなく、ひなっちが弾いたものらしい。
ラストで少女が唐突かつ無機質に叫んでいる台詞は「Girls Back Teen!!Girls Back Teen!!」。虚無だ。


15.(Seagull)
隠しトラック。
タイトルはRide「Seagull」を率直に引用したものだろうか。
セクシャルな歌詞を見ても、横ノリでファンクの要素を感じさせられるサウンドを見ても、第一期のものとは思えない、ほとんど第二期のような曲。しかしサビでは第一期特有の焦燥感のある大山のギターが鋭い。
この時点では、かなり実験的なことに挑戦しているはずで面白いのだが、隠し曲なので聴く機会があまり少ないのがもったいないのが、難点。


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『UNDER MY SKIN』

ART-SCHOOL,木下理樹
EMIミュージック・ジャパン
(2003-09-29)

 
第一期のラストシングル。

【特徴】
・個人的には廃盤になっているARTのシングルの中で、最も聴き応えがある充実した内容だと思います。
・ジャケやCD盤面の絵は、大山によるもの。
・内ジャケで木下が着てるバンTは、Black Sabatthのもの。

2003年9月リリース。



1.UNDER MY SKIN
タイトルは1950年のアメリカ映画『Under My Skin』か…??さすがにAvirlじゃないでしょうし。苦笑
図太すぎる重厚なベースラインで終始突き進む、「車輪の下」と「Evil」を足したようなグランジな曲調。イントロの激しいハウリングも端的にこの曲の世界観を表している。
サビはAdorable「Sunshine Smile」を、The Police「So Lonely」風のメロディに乗せてうたったもの。
今でもARTのライブ終盤では、必ずといえるくらい演る曲でコンスタントに人気もある。
PVでは車が爆発したり、ドラッグパーティをしているかのような狂乱騒ぎのドラッギーな感覚がとても素晴らしい(どこかFlipper's Guitar「GROOVE TUBE」のPVを彷彿させる感もある)。また最早、言うまでもなく櫻井がバナナを食べさせられていたりと相変わらず素晴らしい役を担っている。笑
タイトルは後に漫画家、犬上すくねが『ラバーズ7』にて引用。


2.JUNKY'S LAST KISS
タイトルは、後に「アパシーズラストナイト」で使いまわされている感がある。
冒頭部分の歌詞はdip「冷たいくらいに乾いたら」から。
××××(ピー音)部分の歌詞は「ヘロイン」。実際のドラッグに誘ってるようなのでレコード会社から規制がかかったとのこと。
機械的なリズムパターンは前作「DRY」から受け継がれてるような感じもある。
大サビの「Slow Down」は後に「real love/slow down」に使いまわされている(個人的には歌詞カードを読まずに最初聴いた時、「I'll take you anywhere」を「這って消えるから」、「slow down」を「そうだ」に空耳していて、『SWAN SONG』同様に厭世観がすごいなぁと勘違い?していました。苦笑)。


3.LUCY
北欧ポストロック風の弾き語りに近い素朴な曲。
個人的にはARTの中でも最も好きな曲の一つで、ポップでキャッチーな口ずさめるサウンドに<<そうさ違う人間に生まれたかったんだ/きっとましだった>>と厭世を繰り広げる雰囲気は前作『SWAN SONG』全体を引きずっている感じがするが、あまりにキャッチーなメロディに載っているゆえに不思議と重たさを感じさせない。
シングル曲のラストに、シンプルで簡単な曲を持ってくることが多い初期のARTの中でも、恐らく最高峰のラスト曲だろう。


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『SWAN SONG』

ART-SCHOOL,木下理樹
EMIミュージック・ジャパン
(2003-07-30)

 
現在、廃盤となっているARTの音源の中でも最も人気があるであろう、2バージョンタイプのmini album(一方はシングル)。

【特徴】
・Disc-1、Disc-2となってますが、別売り限定発売で現在、どちらも廃盤(自分も残念ながらDisc-2しか持っていません)。
・『Requiem For Innocence』とも『LOVE/HATE』とも違う独特な世界観でまだまだ音源化希望の声が強いけれど、レーベルの関係もあり残念ながら恐らく再販は不可能に近いかと思われます。
・この2バージョンの販売方式を考えたのは、東芝EMIのプロデューサー(NUMBER GIRLなどを発掘。最近ではBase Ball Bearなどを担当)加茂啓太郎氏の意見によるもの。

2003年7月リリース。


【Disc-1】
1.LILY
『SWAN SONG』の世界の幕開けとなるのは、暗く重たく儚げなこの曲。
イントロはThe Cure「Pictures Of You」のメロディラインを率直に引用している。
今までのARTとは決定的に違う<<生まれてこない方が良かった>>とまで宣う厭世観が前面に押し出された世界観はドロドロである。
諦念さえ感じさせる大山のシャープなギターは、この曲の要である。


2.DRY
第二期の「刺青」などに通じる無機質ながらもリズミカルなドラムから始まり、サビになると激しくも口ずさめるような曲調になっている。今作の中では聴きやすい方だろうか。
Aメロのボーカリゼーションは、「ミーンストリート」のそれを踏襲した淡々としたもの。
<<永遠に少しずつ死んでいく>>は、Flipper's Guitar「世界塔よ永遠に」の間奏部分から。
ラストのブレイク気味のアウトロは「モザイク」の使いまわしで、Superchunk「Animated Airplane Over Germany」のそれからの引用。


3.OUT OF THE BLUE
タイトルは後に「IN THE BLUE」で使いまわされているが、対になった曲調とは、あまり言えないような感じがする。
今作の中で最もまとまりがあって、第一期のARTによる典型的な曲調でありながらその魅力をうもれさせない秀作。
サビも口ずさめるようなポップなメロディーラインに<<死んだほうがマシなんて〜>>と厭世的なもので、2番は<<君のホクロの場所や匂い、すがって、ただすがって>>と第二期に通じるセクシャルな君の捉え方が面白い。
先述のように、最もまとまりがありアップテンポな曲調もあるので個人的にはもっとライブでも聴いてみたい曲であるが、残念ながら少なくとも自分はライブでは聴いたことがない…


4.LOVERS
タイトルは後に「LOVERS LOVER」などで使いまわされている。
イントロの印象的なリフは、Pavement「Major Leagues」のサビ部分のギターから。
サビのキャッチーなフレーズは、木下ソロ時代の「RASPBERRY」の使いまわし。
サウンドはシューゲイザーと言うよりは、ドリームポップな感じでBlonde Readheadみたいなサイケデリアも感じられる。


5.SKIRT
後にアルバムにも収録される曲。
今までのアルバムのどん詰まりの厭世観を吹き飛ばすような、爽やかなアコギのポップソング。
サビのリードギターは、雰囲気的に「スカーレット」に使いまわされているように感じる。
シンプルな曲構成ながらキャッチーなリフやそこはかとないセクシャルな感覚(<<君の匂いや指が/激しさ/スカートの色が>>)がウケるのかファンの人気も高く、一時期はライブでアコギで演る事も多かった曲。


6.SWAN SONG
後にベストに収録されることになり、聴かれることも多くなった隠れた名曲。
「車輪の下」のリフを応用したような、変則的なベースラインに落ち着いていながらもポップなクランチギターが炸裂するタイトルトラック。
PVでは双子の美少女がレズビアン的な世界観を醸すアングラなもので、その双子が万引きをするシーンがダーティに歪みつつも静謐(ここでも櫻井が相変わらず良いポジションを担っている。笑)。
PV内で木下が着ているTシャツはOzzy Osborneのもので、双子の部屋に飾ってあるLPは右上から時計回りに、Tahiti 80『Puzzle』、Teenage Fanclub『Bandwagonesque』、The La's『S/T』、Jesus & Mary Chain『Psychocandy』。
絶望的かつ厭世的なアルバムのラストを飾るこの曲はARTの中でも数少ない希望を歌った歌。
底なしの虚無と厭世のアルバムの最後に、この曲を持ってきたのは、木下流の救いの提示だろうか。
タイトルは後に漫画家、犬上すくねが『うぃうぃdays』にて引用。



【Disk-2】
1.SWAN SONG
上記。


2.LILY
上記


3.MEMENT MORI
タイトルはラテン語の警句で「死を想え」という意味。
色々な芸術作品のタイトルで多用されているが、有名なのはやはり藤原新也のインドでの無常観を綴ったフォトエッセイ『メメント・モリ』だろうか。
サビのメロディは「TEENAGE LAST」の使いまわし。
一応、バンドサウンドだがほとんど弾き語りみたいな素朴な曲で歌詞カードがない分、歌詞はARTの中でもかなり悲痛なものになっている。
MARQUEE誌によると木下はこの曲のRec中、(ボロボロの状態のバンドと歌詞がシンクロしたのか)苦しすぎて泣いてしまい、何度か上手く録れなかったらしい。その為か嘆きのようなボーカルになってるのが見物。

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『Evil』

ART-SCHOOL,木下理樹
EMIミュージック・ジャパン
(2003-04-11)

 
『LOVE/HATE』期の始まりを予感させる、2nd single。

【特徴】
・「WISH」以外は全部、後にアルバムに収録されるので廃盤になったARTの盤の中でも需要は少ない方か。
・ジャケットは大山によるもので、水彩画のようなタッチ。

2003年4月リリース。



1.Evil
リフはまんまSoundgarden「Room A Thousand Years Wide」。
これも最初に聴いた時、内心「Evil」やんとつっこんだ記憶が(逆)。
曲名は当時、木下に彼女が2人いて、その彼女同士が木下の目の前で鉢合わせして「邪悪だな…」と思ったことから(ROCKIN'ON JAPAN誌より)。
これは典型的なオリジナルに近いグランジソングでシアトルの匂いがプンプンする曲。
重厚なリフから重苦しいのた打ち回るサビまでがもうAlice In ChainsやSoundgardenみたいだけどシングル的にどこかポップな側面もある作風です。


2.WISH
タイトルはNINE INCH NAILS「Wish」から。
イントロから雪崩のように崩れこむ音の洪水、特に大山のモジュレーションをかけた嵐のようなギタープレイは、まさにシューゲイジーでオルタナの鏡のような曲。
曲全体の雰囲気も引用元のNINみたいな攻撃的な曲。
2分以内で収まるシンプルな曲ながら、かなりエッジの鋭いギターで存在感のある曲。


3.モザイク
恐らく第一期のARTの中で最もエロティックで、歌詞だけ見ると第二期のような雰囲気もあるミドルテンポの曲。
「MISS WORLD」同様に静→動の動きを強調した曲構成で歌詞の残酷さを強固にしている。
永遠に君と僕は他人という、ARTが後に追求し続けることになる個の世界が明らかになっている。
それにしても<<さあ舐めて>>とか<<もう一度何が欲しいか言って>>とか、直接的にサディスティックなエロティシズムを感じさせる曲だ。苦笑
アウトロはSuperchunk「Animated Airplane Over Germany」のそれを引用しており、後に「DRY」で使い回されている。


4.ジェニファー'88
サビがソロ時代の「GLORIA」をまんま英訳した感じだ。
<<君の冬が〜>>はSmashing Pumpkins『Silver Fuck』の冒頭部分から。
曲構成としても「GLORIA」と似通ってはいるが、こっちの方がやっぱり切迫感があって、煮え切らない感じがフツフツとしている。
最後のドラムがドカドカ演る感じは、少しWeezerなどのパワーポップ由来の印象も。

 
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